ACCIDENT 2―5「潤ちゃん!どうしたのっ!?」悟浄におんぶされている潤の姿を見て・・・・桃花が飛んで来た。「妖怪に襲われて、腰を抜かしちゃったの。悟浄、ありがと。もう立てると思う。」 「もう、良いワケ?ずっと抱っこしててもイーんだケドv」そう言いながら、大人しく潤を下ろす。 なぜなら・・・・八戒が包丁を持って微笑んで居るから。 「潤さん。怪我をしてますね?」 見ると、足に切り傷がある。 「あ・・・さっき座り込んだ時に、葉っぱで切っちゃったかな?」薄く血が滲んでいる。痛みは余り無い。 「足を出して下さい。治癒しますから。」「エッ。イイです!イイです!大した怪我じゃないし・・。」 八戒はにっこり微笑んで、 「ばい菌が入ったらどうするんです?それに潤さんに怪我なんかして欲しくないんですよ。 ・・・・彼に叱られちゃいますから、ね。」 うあああっ!!なにげに恥ずかしい台詞を吐くのは止めて~っ!真綿で首を絞めないでぇぇ!! 「お願いします・・・。」足をそっと差し出した。八戒が手のひらに小さな光球を生み出す。 『コレが・・・気功。』柔らかで温かそうな光球を、足の切り傷にそっとあてる。『あったか~い・・。』 潤がウットリしている間に「はい、治りましたよ。」「・・ほぇぇ?」傷を見れば跡形もなく消えている。 「スッゴイ!!スゴイよ!!」・・・現実世界に来たら、神様扱いだね!!新興宗教で大儲けだっv 「あはははは・・・そんなに感激されると照れますね。」いや、してないでしょ。その笑顔は。 「潤、もう平気か?あーあ。俺が付いて行ってたらなぁ。」悟空がため息を付く。 「ナニ?小猿が行ってたって変わらねーよ。」「エロ河童よりましだろーがっ!」悟空と悟浄の間で 火花が散り、今にも掴み合いのケンカが始まりそうな雰囲気が漂う・・・「止めんかいっ!!」 【ゴキッバキッ】桃花の拳骨が(メリケンサック付きv)悟空と悟浄の頭にお見舞いされた。 「「桃花ぁ~。」」涙目の悟空と悟浄。「もうっ!潤ちゃんのお祝いするんだからっ。ケンカしないの!」 ギロッと桃花に睨まれて、項垂れる二人。・・・叱られた犬みたい・・・(ゴメン) 「はいはい。さ、御飯にしましょうね。」保父さんの役割通り、八戒がまとめ、皆が焚き火を囲んだ。 野宿とは言え、八戒が腕によりをかけただけの事はある。限られた道具と食材で、良くもコレだけの 料理を作るものだと潤は感心しきり。 「潤!コレ美味いぞっ。」悟空がドンドン潤の皿に料理を入れる。「あはは・・ありがと、悟空。」 こっ・・こんなに?食べられるかなぁ。 「小猿ってば潤を気に入ってるからってやっさしーv」「うるへー!赤ゴキブリッ!!」 くっ口から食べ物が飛び出してるって!ぁあ~!!桃花ちゃんがメ、メリケンサックを~っ!! 「・・・二人とも。食事中ですよ?御飯抜きにされたいんですか?」・・・最強八戒! 見事に悟浄と悟空を止めたっ!・・・長続きはしないんだろうけど・・・。 「――――――チッ。またか・・。」三蔵が箸を置いた。それに続いて八戒達も箸を置く。 「え~?またなの~!?」ウンザリした声を桃花が上げる。「桃花ちゃん?またって・・・。」 「ニンゲンの匂いがすると思ったら・・・ケッケッケッケッ。」ゾロゾロと妖怪達が周りから出現する。 ぎゃあっ!!また妖怪だぁっ!!・・・確かに、“また”って言う状況よね。 焚き火をしている三蔵達を取り囲むようにして、妖怪達が何重にも輪を作っている。 「あたしヤダよー。せっかく八戒ちゃんのご馳走、味わってるのに。」 「俺もー。暴れてもイイけどさ。食い物がグチャグチャになるのはちょっとなー。」 「そーそー。潤のお祝いだゼ?血なんか流したくないっての。な?」 「と言うわけで、三蔵。パパッとヤッちゃって貰えませんかねぇ?」 ・・・・・みんな。余裕だね。私一人で汗かいちゃってんの?周りの妖怪も唖然としてるし。 「煩い、貴様ら・・・。俺の手を煩わせるんじゃねぇ。」ぅああ。妖怪より恐いって!! 「だーって三蔵!何にも手伝わなかったじゃん!悟空ちゃん達が暴れまくるよりマシだと思うけど?」 桃花の言葉にため息を付きながら、「・・・・・・・チッ。」紫暗を閉じた。 「てめーら!状況が判ってんのかぁ!?」「一人残らず喰っちまうぞ!!」妖怪達の威嚇を流すように、 「ああ。もう少し待ってて下さいね。すぐに終わりますからv」八戒が人当たりの良い笑顔を浮かべた。 「・・・ふざけっ・・「・・・・・魔戒天浄っ!!」 三蔵の声と共に、魔天経文が生き物の様如く、 三蔵の肩からうねりを上げて飛び出していく――――――『生・魔戒天浄っ!!』 アッという間に・・・・・・・・・・周りを取り囲んでいた妖怪達が消滅する。 『スゴイ~!凄かった・・・。ヤッパリ生は違うv』見ると、いつの間にか経文は三蔵の肩に収まっている。 ハリセンと言い、魔天経文と言い・・・三蔵が一番、妖怪っぽいかも・・・。 ―――――――――聞こえたら半殺し間違いナシの言葉を、潤は必死に飲み込んでいた。 食事も終わり、皆がシートに寝転がった。夜空には見た事のないような、満天の星空が広がっている。 『眠ったら・・・帰っちゃうのかな。』名残惜しい。出来ればもう少し・・皆と居たい。 でも。 自分はこの世界の人間じゃない。 いつも、命の危険と隣り合わせのこの世界で・・・・・生き抜いていける自信も無い。 それに。 妖怪に襲われた時・・・脳裏に浮かんだのは。 悟浄でも。 悟空でも、ない。 『明日・・・・一緒に写真、撮りに行くんだもんね。』 “潤は、幸せ者ジャン。”・・・そうだね、悟浄。ココに来ると、ホント・・良く言われるよね。 そっと伺うと・・・眠りこけている面々。 八戒は手を組んで。傍らにジープが丸くなって眠っている。 悟空は大の字に。横向きに眠っている悟浄の体の上に・・・足を乗っけている。(重そうだ) 三蔵も横向きに眠っている。一人ソッポを向いているような姿が“らしい” 自分の隣には・・・桃花ちゃん。むにゅにゅと動いている・・・可笑しいv 『みんな・・・・また、ねv』潤は、ゆっくりと目を瞑った。 現実世界に帰るため。 大事な人と、大事な日を・・・・・過ごすため。 本当に、私って “幸せ者” だよね。 HAPPY!HAPPY BIRTHDAY!! 完 |